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当社マツキヨココカラ&カンパニーは、ドラッグストア「マツモトキヨシ」として 1932 年に創業しました。2022 年で創業 90 周年を迎える当社は、市場ニーズに対応したヘルス & ビューティーの専門性を高めた業態を展開したり、消費行動の多様化に合わせたデジタルマーケティング戦略を推進したりしています。店舗と EC を組み合わせたオムニチャネル戦略の強化もそうしたチャレンジの 1 つ。店舗だけでなく、EC やアプリなどで顧客とのタッチポイントを増やし、ライフタイムバリュー(LTV)を高めるのが狙いです。
そうしたオムニチャネル化の次の施策として、2019 年の記事で、メーカーと当社の共同販促モデル「Matsukiyo Ads(マツキヨアド)」を紹介しました。Matsukiyo Ads は、マツモトキヨシ店舗が扱うメーカーの製品を、当社が管理・運用する Google 広告で配信。広告とマツモトキヨシ公式アプリを連携させることで、広告接触者が実際に店頭に訪れ、商品を購入したかどうかを検証できるものです。
Matsukiyo Ads の強みは、マツモトキヨシ店舗での購買データに基づいて、デジタル広告の配信を最適化できることにあります。顧客のプライバシーに配慮し、法令遵守を徹底したデータ運用体制のもと、EC はもちろん、店頭での購買までを結びつけた効果検証が可能になるのです。
Matsukiyo Ads を正式にローンチして以降、実績を重ねてきました。ローンチした 2019 年 は 19 件の広告を運用。コロナ禍だった 2020 年以降も多くの受注を集め、これまでに 100 件を超える案件を運用しています。
そして 2021 年 10 月には、マツモトキヨシホールディングスとココカラファインが経営統合し、マツキヨココカラ&カンパニーとなりました。売上高 1 兆円、3,000 店舗をもつインフラ企業として、グローバル展開を加速すると共に、統合後もいっそうオムニチャネル化を強力に進めています。
小売からマーケティングパートナーへ
海外の小売業界では、自社ビジネスのポートフォリオを拡大する動きとして、ビジネスモデルを広告ビジネスへと拡張する動きが進んできています。
当社ではそうした流れをいち早く察知し、2016 年に広告ビジネスを試験的に立ち上げたのです。小売業である当社が広告メディアを展開することについて、当初は各所から戸惑いの声もありました。メーカーをはじめ、社内でも、営業に限らずマーケティングやブランディングの担当者への理解を得られるように働きかけていったのです。そして何度も PDCA を繰り返した末に Matsukiyo Ads をローンチしました。2021 年までの 5 年間で、広告の取り扱い高はおよそ 10 倍まで拡大しています。
Matsukiyo Ads は、単なる来店計測ができる広告枠だけには留まりません。当社の分析結果をメーカーに還元し、メーカーのマーケティングパートナーとして共にブランドを育てていこうとしています。そのために、メディアビジネスやアナリティクスといった専門組織を 2022 年 1 月に新設し、社内の組織体制も変更しました。
実際に Matsukiyo Ads を活用したメーカーが、単なる販促効果の可視化だけに留まらず、ビジネスそのものを成長させるケースも出てきました。今回は 3 社の事例を紹介します。
花王「ビオレ」:購買レビューを商品開発に反映
まず紹介するのは、花王株式会社の事例です。同社の日焼け止め製品「ビオレ UV アクアリッチ アクアプロテクトローション」は、正式販売前に Matsukiyo Ads を活用することで、実際に当社のチャネルで商品を購入した顧客の声を集め、それを製品開発に活かしました。
正式販売前の 2021 年 5 月から 6 月にかけて Matsukiyo Ads で広告を配信し、マツモトキヨシグループ、ココカラファイングループにて 20 万個のテスト販売を実施。同社としてもここまで大規模なテストは初めての取り組みでした。その後、実際に広告経由で購入した顧客に対してアンケートを実施し、およそ 2,000 件のレビューを獲得しました。その中でも特にネガティブなコメントに注目し、香りに関する機能を改善し、2022 年 3 月の正式販売に至ったのです。
この取り組みで手応えを得た花王では、2022 年も新たな UV 製品の試験販売を同様のスキームで試みる予定です。
デジタル広告メディアと購買が直接結び付いている Matsukiyo Ads だからこその取り組みと言えるでしょう。
資生堂「エリクシール」:配信タイミングの最適化で成果、今後は新規顧客の定常的な獲得へ
コロナ禍でインバウンドの需要や取扱店への来店が激減する中、株式会社資生堂のエリクシールブランドでは、国内の顧客の売り上げ拡大を目的に Matsukiyo Ads を活用しました。
マツモトキヨシ店頭と EC でのキャンペーン時期に合わせて、2021 年に複数回 Matsukiyo Ads 経由で広告を配信。各施策後に、新規顧客と既存顧客に分けて分析し、前者の獲得に向けて配信設定やクリエイティブの見直しを重ねました。
コロナ禍の影響により顧客数は微減したものの、当社アプリのデータを分析することにより、年間の購入点数、客単価、そして売上は前年を上回る成果をあげることができました。
この結果を受けて資生堂では、キャンペーンのタイミングに合わせたスポットの広告配信に加えて、常にブランドと顧客との接点を保ち続けることで、定常的に新規顧客を獲得するための施策を検討しています。また今後は、購買履歴に基づき、過去の購入者に向けて広告を配信することで、リピーター化を狙うと共に、リピート率を維持するために従来の店頭での販促展開も引き続き実施していきます。
山本漢方「大麦若葉」:購買につながりやすいセグメントを分析、リーチを大幅に拡大
山本漢方製薬株式会社は、青汁の「大麦若葉」ブランドで、2020 年 4 月から 2021 年 8 月までの長期にわたって Matsukiyo ads を活用。どのような広告がその後の購買につながったかを分析することで、購買につながりやすいクリエイティブとセグメントを導き出し、それをマス広告の効率化にも活かすことを目的とした取り組みでした。
初期から活用をしていたデジタル会員への配信に加え、同カテゴリの商品購入者に近しい属性をもつ潜在顧客層へリーチを大幅に拡大。複数回にわたり、購買率を高めるためのセグメントやクリエイティブの PDCA を試し続けたことで、年間 LTV を下回る顧客獲得単価(CPA)で配信できる層にも訴求できるようになりました。結果的に、デジタル会員全体の売上も前年同期比 127.68% と大きく伸長しました。
広告枠を提供、配信するだけでなく、購買に結びついたセグメントをつぶさに分析することで、潜在顧客を探索できた事例です。
青汁というカテゴリでも成果を出せたことで、同社では他ブランドへの転用も検討し始めています。
今後は配信面の拡充と、購買データに基づいた顧客探索も加速
マツキヨココカラ&カンパニーでは、これまでアプリを通じて取得したデジタル会員の購買データを活用することで、YouTube 上で広告を配信ができるMatsukiyo Ads を通じて、顧客への効率的なリーチを実現し、来店を促進してきました。
今後当社は、メーカーのマーケティングパートナーとしてより貢献できるよう、まずはクライアントのマーケティング課題に応じて、顧客との接点を拡充していきます。Matsukiyo Ads の広告枠を単発で提供するだけではなく、今回紹介した 3 社のように、定常的に顧客とメーカーの接点を作ることで、エンゲージメントを高める機会を提供していきます。また広告は YouTube だけでなく、当社の自社メディアや SNS、当社が提携している動画配信サイトへの配信も可能にすることで、リーチ範囲をさらに広げていく予定です。
さらに、法令を遵守した形でデータに基づく顧客探索も加速します。Google Cloud の BigQuery を活用し、独自の機械学習モデルを構築。過去そのブランドで商品を購入した人の併買データなどを基に、購入の可能性が高い拡張オーディエンス群を探索し、広告配信に活かします。ある商品の購入という点ではなく、マツモトキヨシ店舗での連続した購買実績を面として分析することで、蓄積したデータ群を活用しきることを目標にしています。
こうした取り組みを通じて、デジタル会員の LTV を高め、クライアントのビジネス成長に貢献していきたいと思っています。